鈴木無花果
鈴木無花果 寿命-花-AI
       

ナタク

毎日、花に水をやるのが僕の仕事。
真っ白な空間に視界の端まで広がる白い棚、規則的に並べられた幾万もの白い鉢植え。花は色とりどり。
この鉢植えの花たちは一つ一つが、どこか地上にいる人間に繋がっている。
生命のリンクシステム。要は花の世話をしていれば、リンク先の人間は常に健康ということ。接木も思うがまま。
管理するのが僕たちアンドロイド。
ただ花に水をやり、傷がついたら修復する。それだけ。
それだけで、地上から医学は無くならずとも、医者という人はいなくなったと言うけれど、僕たちには関係がない。

その日は、寿命が来た花を片付けていた。
目についたのはとても立派な赤い花をつけた鉢植えだ。
僕はその花から花びらを一枚かすめて、予備の鉢植えの中に隠した。
今でもそんなことをした理由は分からない。けれど昔からAIにバグはつきものだなんて話も聞く。
その後も僕は機を見て花びらを集め続け、鉢植えに差し込み続けた。
そしてある時、その花びらたちは一つの花として形を作り、根を生やしたのだった。

***

俺には記憶がない。
気がついた時には裸でひとり、街の中で倒れていた。
俺はこの世界のシステムを何も知らず、そしてそのシステムに組み込まれてもいなかった。
だからこそ分かる。この世界は異常だ。
他人に、機械に、ただ生かされているだけだ。
同じような考えを持つ人間は少なくない。俺はレジスタンスとして彼らを導いた。
途中、何人もの仲間の首が目の前で飛んだ。
身元が判明すれば、あちらは俺たちの花をハサミで切ってしまえばいいだけだ。
そしてついに俺は花を管理する”ガーデン”に辿り着く。
ここを押さえ、全ての人間と花のリンクを切り離す。

俺を迎えたのは一体のアンドロイド。
その手元には一つの鉢植え。その花は一枚ずつ色の違う極彩色。
彼は俺を見て、何かを悟ったかのように呟いた。
「おかえりなさい。僕はどこかでこの日を期待して、花びらを集めたのかもしれません」
俺は引鉄を引き、そのアンドロイドを撃ち抜いた。

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