鈴木無花果
鈴木無花果 保存-ぬるぬる-真実
       

アトミック・ボム

高校2年生。この4月に編入してきたマミに一目ぼれしてしまった。
マミは快活で裏表のない性格。

夏の日、ついに告白を決意する。
このあたりで告白のスポットといえば決まっている。
”爆心地”と呼ばれる、何もない広場に突如現れるクレーター。直径は百メートルに及ぶ。

爆心地の中では、嘘をつくことができない。
なぜならここには昔、”真実の爆弾”が落ちたのだ。
だからそこで行われる愛の告白に嘘偽りはない。
そんなわけで、このあたりの学生たちはこぞってここで告白をする。

まぁ、迷信だ。
戦時中の不発弾が爆発を起こして、それ以外にも埋まってるかもしれないから工事もできず保存されているだけの穴。
中で告白すると良いというのも、別におとぎ話が存在する。
くぼんだ爆心地は雨上がりにも水がはけないため、地面がぬかるんでしまう。
小学生の男女がそのヌルヌルで遊んでいたところ、転んでしまいそうなところを男の子が助けて、女の子が恋に落ちたとか。

当然、中で嘘もつき放題。
去年のバレンタインデー、誰からもチョコレートをもらえなかった俺は爆心地に突撃していた。
ぜってぇ告ってるバカがいるハズなので殺しに行ったのだが逆に誰もいなかった。
余りのむなしさに俺は爆心地の中心で「彼女からもらったチョコうめぇ!!」と叫びまくったのだった。証明終了。
そして出ようとしたら雪のぬかるみで盛大にすっころんだ。俺を助けてくれる人はいなかった。

夏に戻る。
俺はマミを爆心地に呼んでいた。迷信にもすがる思いである。
想いを伝えると、マミは一度困ったような顔をしたが、俺を受け入れてくれた。

俺たちの交際は順調に続き、ついにバレンタインデーを迎えた。
初めての、恋人がいるバレンタインデーだ。
マミから爆心地に誘われた。俺たちの思い出の場所だ。

マミからチョコレートを渡される。
食べて、と勧められて口にする。感動だ。美味過ぎて涙が出てくる。
美味いよ、美味い。
伝えると、マミは泣きながら、ありがとうと言った。

そして、翌日からマミは学校に来なくなった。
連絡もつかない。先生たちも事情を知らないようだった。

俺は茫然と、爆心地に立っていた。
爆心地では嘘はつけない。
つまり、ついた嘘が無理やり真実になる??

「マミにまた会えてうれしい」
つぶやいたが、彼女が現れることはなかった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました