(本名)
(本名) クリーム-男の子-地獄
       

バレンタインがやってくる

憂鬱だ。今年もバレンタインがくる。
大野はバレンタインが嫌いだった。
なぜなら、どうせ今年もチョコレートはもらえないからだ。小学校の頃からそうだった。中学に上がった今年だって、きっと1つももらえないだろう。
だったら、もらえない人間を1人でも多く増やすしかないのではないか。
そう、チョコレートを買い占めてしまえばいいのではないだろうか。
いや、だめだ。世間に出回っているチョコレートの数は多い。菓子メーカーはここ1年の売り上げをすべてここにぶつけているんじゃないかと言わんばかりに気合をいれる。大野のおこづかいだけでは限界がきてしまう。
ある程度抗議になって、仲間内でどうにか買い占められるもの。そうだ!
考えた大野は、抗議活動として生クリームを買い占めることを思いつくのだった。

かくして、大野の思想に共鳴した大野を筆頭にした男子軍団は、町中のスーパーやコンビニを駆け回り、生クリームを買い占める。
そして、その様子を2ちゃんねるに投稿して、憂さを晴らした。
すると、面白がったネットの住民に火がついて、やがて全国的な運動へと発展していった。そう、祭になったのである。

町は地獄の様相を呈していた。どこに行っても生クリームがないのだ。
ただでさえ高い生クリームは高騰して、メーカーの製造も追いつかず、社会的な問題へと発展した。
女の子たちは憤懣やるかたなく、全国のメーカーも困ってしまっていた。

大野の隣の家に住む圭子ちゃんも困ってしまったひとりだ。
これでは好きな男の子へのバレンタインの贈り物が作れない。
そんな中、大野の家へと回覧板を渡しに行く機会があり、その際に、大野の家の冷蔵庫には生クリームが大量にあるのを見てしまう。

「ちょっと!どうしてあんたの家にはあんなにクリームがあるのよ!!」
大野を問いつめる圭子ちゃん。あわあわしながら事の顛末を話す大野。
大野の答えに圭子ちゃんは怒りを通り越してあきれてしまい「それだったら毎年私が作ってあげるわよ」と答えた。ほんと!?と驚く大野。ほんとよ、と圭子ちゃんは少し照れながら言う。
実は、圭子ちゃんはバレンタインに大野にチョコケーキを作って上げるつもりだったのだ。
毎年、贈りたいけど贈れない。今年こそ、と勇気を出そうとした矢先の騒動だった。

かくして町は元通りの静けさを取り戻し、指に絆創膏を貼った圭子ちゃんからもらったチョコケーキを大野はおいしく食べることができた。
そしてこの生クリーム買い占め事件が、2ちゃんねるの歴史に載ることになるが、そのことを彼らが知るのはまだまだ先のことであった

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