鈴木無花果
鈴木無花果 トイレットペーパー-草-回覧板
       

ジャー・ガイダンス

「最近呼び出しが多く、ご対応に限界があります。この状況が続きますと、必要な煙を増量せざるを得ません。ご配慮をお願いします」

回覧板をチェックしていたら、神様からの苦言がA4用紙一杯に書かれていた。

このあたりでは神様は身近な存在である。
決められた薬草を燃やしてその煙を吸えば、モヤの奥から顔を出す。
昔は村の行く末を決めたいとかそういう時に、限られたシャーマンだけが神様に会っていた。
今はしかし、晩御飯のおかずがどうとか、孫に買うおもちゃは何がいいとか、そんな話に付き合わされているらしい。

しかし僕はどうにも神様とソリが合わない。
神様的には自然が一番、というのがコンセプトらしく、機械は使わない方がいいだのワクチンは人工的だから打たない方がいいだの、ちょっと考え方が古いのだ。
だいたい、神様なのに何か願いを叶えてくれるというワケじゃなく、アドバイスするだけってアンタ。

神様からの苦言を流し見でめくると、見慣れないチラシが目に入った。
「お試しキャンペーン中!トイレットペーパーオマケします」
なんでも、最近開業した神様で、初回は”生命”であれば何を捧げてもいいらしい。

試しにそこらを飛んでいた蚊を潰して捧げてみると、部屋が黒いモヤに包まれた。
現れたのは羽の生えた黒いシルエット。
「ありがとうございます。これオマケのトイレットペーパーになります」

なんでもこの神様は、捧げ物の代わりに願いをなんでも叶えるというタイプの神様だとか。
せっかくなのでたくさんのお金を願ってみた。
お安い御用、と言ってモヤが消え去ると、そこには大量の紙幣が残されていた。

これはいい。コストがあってリターンがある。実に現代的じゃないか。

早速また新・神様を呼ぶ。
例えば、不死の身体は手に入れられるだろうか。
問題ない、と彼は言う。ただ、リピートですので、捧げていただくのは別の人間の生命になります。

殺人は面倒だな、と考え始めたその瞬間、意識が飛んだ。
最後に見えた気がしたのは、自分の頭が落下していく感覚と、血まみれの刃物を持ったお隣のタカハシさん。

※※※

「ではこれで、俺に不老不死の身体を」
「かしこまりました」
「このあたりの人も減りましたね」
「おかげさまで。あ、その分オマケのトイレットペーパー余ってるんですが、要ります?」

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