ユキコは嫉妬深い女である。
恋人のヒロアキが他の人間、特に女性と話そうものなら血圧が上170まで上がるとか。
ヒロアキもいつも愛を語る。ユキコもそれを信じていないわけではないが、どうしても気になってしまう。
そしてモバイルのGPSをお互い辿れるようにしたのだった。これで浮気なんかできない。
ヒロアキは喜びに震えていた。
ユキコほど自分を愛してくれる女はいない。
今日こそユキコに自分の愛を証明する。
付き合い初めてから2ヶ月の記念日、ヒロアキはプロポーズを決心していた。
しかしここでミッションが発生。
ヒロアキはロマンチストなのだ。
プロポーズのための指輪を買っているなんて絶対にユキコには気付かれたくない。
ヒロアキの勤め先は市街地の薬局。
昼休みに宝飾店まで駆け込むことは理論上可能である。
デザイン、サイズ等は全て発注済み。あとは契約書へのサインと受け取りのみ。
ちなみに、郵便物は全てチェックされているので通販はNG。
ミッションスタート。
いつも通り、出勤のギリギリまでユキコとメッセージのやりとり。
業務に入り一旦連絡を中断。
昼休み、ご飯を食べに行く、とだけ連絡し、”職場に携帯を忘れる”!
ダッシュ!
この間、ユキコへの連絡は途絶えることになる。イレギュラー。
これは後に判明することだが、このダッシュ開始の一分後から、ユキコによる「ねぇどこにいるの?」「ケータイ忘れてるなんてありえない」「いま向かってる」「今駅前にいるの」などの超連投が届いている。
ヒロアキのダッシュ開始から5分後、薬局に鬼の形相の女が現れ、ヒロアキの名前を叫ぶ。
「すいません、山田は急な調剤が入ってしまって・・・」
若い受付の男がユキコに恐々と告げ、奥の調剤室を指す、確かに奥まったところにヒロアキの後ろ姿。
そうですか、ユキコは逆立った怒髪を下ろし、待合ベンチに座り込む。
5分ほどして。
「ごめん、急なイレギュラーが入って。心配させてごめんね」
待合まで出てくるヒロアキ。
いいの、ユキコは微笑んでどこかへと帰っていく。ヒロアキのポケットには指輪のケース。
顛末。
ユキコが職場まで駆けつけると分かっていたヒロアキは、職場の後輩にヒロアキと全く同じ髪型にさせ、調剤室の奥での作業をさせる。
そして客へ薬を渡す直前までに帰りつき、にこやかな接客。待合のユキコにウインクをしながら。
ミッションコンプリート。
「ユキコ、愛してる。俺以外の奴のところなんかいかせるもんか」
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