(本名)
(本名) 落花-大家族-時刻表
       

俺たちホスト大家族

ホストクラブにつとめる<月我>は、同い年の<烈火>、後輩ホストの<水星>、後輩で双子の<木蓮>と<姫木>、ひとつ上の<金トキ>、5つ先輩の<穢土>と<太日>の8人でマンションの1室にぎゅうぎゅう詰めになって暮らしていた。ホストの待機所兼、生活スペースのそこでの共同生活はさながら彼らにとっては家族のようなもので居心地のよいものだった。しかし全員、金はなく、時間つぶしのためのスマホも、会社から支給されていて、監視下にあるため使えない有様だ。

そんな8人の楽しみは、毎週トリックを考えて披露すること。誰かが出した知的パズルを他の7人が解くというものだった。今週のお題は時刻表トリック。店が休業日の月曜までに考えなければいけない。月我は焦る。なぜなら、時刻表をあまりじっくりと見ることがなかったからだ。この回の発起人である穢土と太日は余裕綽々の表情だった。どうやら、2人ともそれぞれ自慢のトリックがあると見える。

その日から月我は図書館へと通い出す。オリエント急行殺人事件や、点と線などの名作を図書館で借りて読むもピンとこない。客の女性に尋ねてみても、時刻表なんてスマホのアプリで十分だからか、要領を得た答えがもらえない。日に日に期限が迫ってくる。慌てる月我。
そんなとき、いつも月我を指名する銀座のママである椿が現れた。椿の飲み方は荒れがちなホストクラブにしては珍しく上品で、しかも気っぷもよく、月我も何度かシャンパンを入れてもらって月間1位にしてもらったことがあるから、頭が上がらない上客だった。
椿に話をしてみたところ、「それ、電車じゃなきゃだめなの?」と言われた。そのアドバイスに電撃が走った月我。これだ、これなら面白いトリックになるぞ。

やがて、予定の月曜日になった。穢土が出してきたのは、再婚列車という分岐がもう一度合流して連結する列車でA線に乗っているはずの犯人が実はB線に乗っていてまんまと逃げおおせるというトリックだった。太日は、通常は停車時間が1分程度の駅で、5分の停車時間が発生する特殊な状況をついたトリックだった。うーむ、すごい。思わず月我はうなる。伊達に自信があったわけではなかったわけだ。思わずみな、酒が進んだ。烈火と金トキはパスをしていた。罰ゲームとして、今日の夕飯作りと酒の買い出しは2人が行った。水星は、殺害された被害者の胃袋から牛タンが出てきたことで、牛タン弁当を食べたことが乗車時間のアリバイを崩すというものだった。
木蓮と姫木は、双子が入れ替わって時刻表の乗り換え時間をごまかすというアリバイだったが、これには審議が入った。時刻表じゃなくて、双子トリックじゃない?というものだったし、木蓮と姫木の2人が考えてきたトリック自体もかぶっていた。この双子はよくそういうことが起きるのだった。
だけど、トリックにほころびがあろうが何だろうが、8人がこうしてそろってくつろぐ時間が月我は好きだった。この時間はある種の鉄の掟で、常連の客のアフターも全員が断っている。

さて、月我の番がきた。月我のトリックはこうだ。ある日、少年が誘拐をされた。少年は東京で誘拐されて、目隠しをされてどこかへ連れて行かれた。それは、どこか?というものだ。
ヒントは2つ。連れ去られた場所には赤い花が花ごと落ちていたこと。最初は車で連れて行かれたが、何かの乗り物に乗せられてから寝て起きても、まだ目的地についていなかったこと。だった。
首を傾げるみんな。答えを教えてくれよ。と早くも烈火は考えることを放棄して聞いた。ちらっと盗み見ると、年長者の穢土も太日も参った、という表情をしていた。水星も悔しそうだ。月我はそれをみて満足げな表情を浮かべ、ゆっくりと周囲を見渡すと、答えをはなす。それは。

落下していた花は椿。花ごと落花するのが椿の特徴だ。そして、椿が咲く有名な場所は五島列島か伊豆大島。そのうち、フェリーで夜通し島へ向かうのは、伊豆大島。だから、正解は伊豆大島に誘拐された少年はいる、というものだ。その日の優勝は月我。
月我にとって、この会で優勝するのは、店の1位になるよりも大変名誉なことなのだった。

コメント

  1. nwcovna より:

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