(本名)
(本名) 運命-馬鹿-酒屋
       

酒精

言葉にすれば全て幻になるってことに、ぼくは馬鹿だから気づかなかったみたいだ。
酒屋で出会った僕にとっての女神は純米大吟醸『夢の中』。こいつを飲むと、なぜだか現から幻へ移行するように彼女へと会えた。
彼女は大学を出て働くまで出会いがなかった僕にとっての運命だった。
馬鹿馬鹿しいくらいに好きだった。
僕は彼女に会いたかったから、会社で働いているとき以外はずっと『夢の中』にいた。飲めば飲むほど彼女の輪郭はハッキリとしてきた。
彼女の微笑みがやさしかった。彼女は僕に話しかけてはくれなかったけれど、そんなことは関係がなかった。
空の一升瓶が足の踏み場もないほど転がった部屋で、ある日ようやく愛を伝えた。
その頃の僕はもう会社には行っていなくて、酩酊しながら酒屋へ行くのがやっとの生活だったけれど、彼女のためなら苦ではなかった。
彼女に愛の告白をすると、彼女は恥ずかしそうに、だけどはっきりと嬉しそうな表情で愛を受け入れてくれた。
その瞬間、僕の視界がぐらぐらと揺れる。
そのまま気を失ってしまった。
その後、僕はベッドの上で目が覚めた。
どうやら急性アルコール中毒で運ばれてしまったらしい。両親と医師が心配そうに見ている。
震える手をしっかりと母が握りながら涙を流していた。
母を見ながら僕の視界の片隅に彼女が見えた気がしたけれど、結局それは幻に過ぎなかった。
僕にとっての女神はどうやら『破滅』だったようだった。

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