想像を超えるのはいつだって地道な一歩だーー。
オレのクラスには宇宙人がいた。外崎幸也。幸也は近くの遺跡に降り立ったUFOから出てきた、というのがクラスメイトの定説だった。幸也も幸也でそんな他人の言説を否定せず、というか我関せず、といった体で生きていた。そしてズレていた。
幸也はどこか夢見がちなところがあり、授業は上の空で、いつもぼんやりとしていたからクラスのドッチボールではよく狙われる体たらくだった。
なぜそんなに幸也に詳しいかというと、オレはあいつの幼馴染だ。
幸也がバカにされ続けるのはどうでも良かったが、なぜ幸也がバカにされても何も言い返さないのかはオレの中でどこか魚の骨のように引っかかっていた。
そんなある日、オレは遺跡の近くで幸也を見かける。追いかけていくと、幸也は遺跡で夜空の写真を撮っていた。
空、そして夏の夜。
そこに幸也はふわふわとシャボン玉を浮かべてそれを被写体にして写真を撮っていた。
「幸也、お前、何やってんだ?」
「何って、写真よ。遺跡のあたりは明かりがなんもねぇから、夜空が綺麗に撮れんだ。俺はこの写真でプロになる」
「ぷ、プロ? 幸也、お前写真家目指してんのか?」
「そうだ。なあ、どーする、トモは?」
まるで、飛翔せずにただよっているシャボン玉がオレに見えた。ふわふわとしていて、高校生にもなって何も決められないオレに。
「お、オレは……。オレは」
何も言えない自分が急速に恥ずかしくなった。真剣な表情でファインダーを覗く幸也をオレは不思議ちゃんだともうバカにできない。
その時、流星が夜空をかけた。
それを見て、オレはこれだと思った。
「だったらオレは、誰もなし得ないことをしてやる。今のお前に恥ずかしくないようなオレになってやるよ。もっと高く飛翔するんだ!」
***
それから、時が流れて幸也はカメラマンになり、月面に降り立ち写真を撮るに至った。
幸也は宇宙空間を振り返って言う。
「すごいよ、トモ! 月面には宇宙人の遺跡があったんだよ」
「ちげーよ、それは半世紀以上前に残した先輩の足跡だ」と宇宙飛行士になったオレは幸也に教えてやった。
コメント
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