大蝗害。
イナゴの大群が世界のほとんどを砂漠にしてしまってからもう数十年が経つ。
生き残った人間は文明を失い、襲来するイナゴに作物を奪われながら、黄色い大地を耕すしかなかった。
ランガは夏を探しに行きたかった。
ランガは大蝗害前の遺跡に潜って、過去の風俗を探るのが好きだった。
どうやら大蝗害より以前には、ニッポンには四季というものがあり、季節ごとに人々は装いを変えたのだとか。
その中でもランガが憧れたのは夏。
強い太陽と開放感、そして、夏の夜にだけ咲くという、花火という炎の花。
果たして今日もランガは花火のヒントを探していた。
8月の夜中。花火が起こるのにはもってこいの時期のハズだ。
いつも通りトウキョウの遺跡を探索していると、何やら特殊な装飾のライフルを見つける。
イナゴ対策には火炎放射器が良いんだけど・・・。
「なんだと?」
ライフルは、物言う銃だった。
なんでも彼は人間同士が戦争をしていた時代に作られた特別製で、誇り高き殺人ライフルなのだそうだ。
突然開発が停止したが、早く自分を戦場へ連れていって欲しい。
人類はほとんど滅びましたけど。
えっ。
たまに野生動物がいるから取るのに使わせてもらいますね・・・。
あ、はい・・・。
なんか2人でしょんぼりしていたそのとき、ランガの耳が羽音を捉える。
イナゴ達がくる。
慌てて帰路に戻るランガだった間に合わない。
遺跡に飛びこむ。窓の外が夜よりも真っ黒に染まる。
イナゴの嵐に巻き込まれるのは何度目でも慣れない恐怖がある。
もしこの窓が決壊すれば、数千匹のイナゴがランガを食い破るのだ。
「こんなもののために人間が滅んだのか?」
ライフルが自分を使えと言う。
引き鉄を引くと、銃口から数千本の光の束が吐き出される。
窓を突き抜けた光はイナゴを焼き尽くしながら拡散する。
宇宙まで届くかと思われた光が拡散しきると、燃え盛るイナゴ達が降り注いだ。
ライフルが言う。
「汚ねぇ花火だ」
「え、花火知ってるの??」
1人と一丁が夏を取り戻すのはもう少し先のお話。
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